スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

正しい人

少年が本棚を見上げている。

その本棚の一番上の段に、少年の欲しい本がある。

しかし、少年の背丈では手を伸ばしても届きそうもない。

少年は梯子を持ってきた。

その梯子を本棚に立てかけ、目的の本の目の前まで来る。

本は他の本を押しのけるかのように押し込まれていた。

自分は他の本とは違うとでもいいたげな本は今、少年の手にある。

少年は梯子に腰掛けて、そのまま本のページをめくった。



『正しい人』


「悪いやつは殺してもいいと思う」

「悪いからって殺していいとは限らない」

「悪いやつは何の罪もない人の大切なものを奪う。その奪ったものの代償を払う意味として殺してしまっても問題ない」

「だからって殺すのはいけない。罪を償うのは生きている内でしかできない」

「なら例えば殺人を犯した者がのうのうと刑務所で生きていることに憤りを感じない人がいると思うか?大切なものを奪われたのに罪を犯した者は何の痛い目も遭わずにのうのうと生きているんだぞ?」

「それでも辛い日々が始まる。罪の意識に苛まれるかもしれない。軍人のような規律正しい生活をしないといけない」

「ハッ。罪の意識が芽生えるなら最初から罪など犯さなければいい」

「人には自制できない瞬間が少なからずある」

「ならお前は殺人を肯定するのか?悪を肯定するのか?」

「そうは云ってない。だけど悪を倒すこともまた悪だと思う」

「意味が判らない。悪を倒すのは正義だ」

「悪を倒すことは第三者的に見れば喧嘩しているのと同じなんだよ」

「ふざけるな。ならいじめられている者を助けることも悪だというのか?」

「ううん、それは正しいことだと思うよ。でも問題なのはその助け方なんだ。君はどうやっていじめられている者を助けるの?」

「いじめられている者を助けるためにいじめている者を倒す」

「それはいじめている者のしていることと同じことだよ」

「違う。いじめている者にいじめられている者の痛みを教えるだけだ」

「だからって暴力をしていいとは限らない」

「いじめている者は力という名の暴力を振り飾す。その力に対抗できるのは同じ力、もしくはそれ以上の力だけだ」

「それじゃあ正義の名のもとにならどんな力を振りかざしてもいいの?」

「悪に立ち向かうためならな」

「でもそれを外から見ている人はその正義を悪と思うだろうね。そしてその悪を倒すためにまた別の正義が現れる」

「それは偽物の正義だ」

「違うよ。どれも本物の正義」

「ふざけるな。ならば悪など最初から存在しないことになる」

「確かに全ての人が正しい行いをしているとは限らない。だけどその逆もまたあると思う」

「逆?全ての人が正しいことをしている可能性もあるということか?」

「そう、正しいことというのは誰かが決めたものじゃない。最終的に正しいかどうかは自分で決めるものなんだ」

「正しさは法律が決める。社会が決める」

「自分が正しいと信じたことは、どんな言葉も聞こえなくなるんだよ。悪いやつは殺してもいいという君のように」

「確かに今の法律では正しくはないのかもしれない。しかしいずれそうなる時がくる」

「そうかもしれないね。でも悪いやつを殺し続けることは恐怖以外の何物でもないんだよ。正義の名のもとの殺戮に過ぎないんだよ」

「違う。殺すのは悪いやつだけだ。悪いことをしなければ殺されない」

「それは殺されることを前提に毎日をビクビクして過ごすことになるんだよ」

「だから悪いことをしなければビクビクして過ごす必要もない」

「誤って悪いことをしてしまった人はどうなるの?防ぎようがなかった事故を起こしたとして、その人はそれから殺されることに怯えながら生きていくの?」

「それは法律が決める」

「じゃあ法律を決めるのは誰?」

「……」

「人間だよ。法律を決めるのはそれが正義だと信じる人間なんだよ」

「法律が間違っているとでもいうのか?」

「違うよ。根本的な法律は間違っていない。でも正義の名のもとの法律は信じることはできない。いつか必ず過ちが起こる」

「起きるわけがない。起きるならそれは悪だ」

「正義に歯向かうのは悪。罪を犯していない人間でも、歯向かう者は悪になる。戦争と同じだね。戦争する国はどちらも正義だと信じてる」

「黙れ」

「何が正しいか、何が悪いことかを決めるのは結局は自分なんだよ」

「ならば正しいのはこっちだ。悪はお前だ」

「そうかもしれない。でもその逆もまたあると思う」

「悪はこちらだというのか?」

「そうかもしれない。でももしかしたら正義も悪もないのかもしれない」

「じゃあ何があるというんだ?」

「さぁ、でも、少なくとも正義が全面的に正しいとは限らないし悪が全面的に間違っているとも限らない」

「じゃあ何が正しくて何が間違っているんだ?」

「それを決めるのも、自分自身なんだよ」



何が正しいかなんか誰にも決められない。

結局はどっちも正義でどっちも悪なのかもしれない。

まぁ、それでも彼の云う悪いやつを殺していい世界になれば、罪を犯すものは少なからず減るだろうね。

でもそれをしていいのは正義じゃなくて神なんだよ。

それにこの二人の言い分はどちらも正しいけれど、人によってはどっちも正義だし、どっちも悪かもしれない。

どちらが正しいかを決めるのは、やっぱりその人自身なんだろうね。



少年は本を閉じた。

そして本を元の位置に戻して、梯子から降りる。

この本が何故、一番上の段にあったのか、少年はそれがやっと判った気がした。

だが、それもまた意味のないことだと、少年は次のお話を見つけ、ただ歩き続けるのだった。








キラ肯定派と否定派っぽい感じで。

結局は結論なんて出せないというオチ。微妙。


それに信じるものは自分で決めたほうが楽しくないかね?

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ななし

Author:ななし
「休止中」





 【性別】
 ♂


 【好きなアーティスト】
 Acid Black Cherry
 Janne Da Arc
 Sound Horizon
 RADWIMPS
 BUMP OF CHICKEN
 少女病

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。