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優しい人

一人の少年が本棚の前にいる。

その本棚はずらりと一列に並び、まるで終わりなき回廊のよう。

そして少年は何かに導かれるかのように、ある一冊の本を手に取った。


『優しい人』


彼は彼女によく「優しい人」と云われる人間だった。

しかしそれだけの人間だった。

彼は彼女の欲しがる物を何でもあげた。

だが、彼が欲しい物を彼女があげることはなかった。

彼が欲しい物は物ではなく、彼女自身だった。

彼は彼女が好きだった。

彼女の気を惹くために、彼は彼女に色々な物をあげた。

しかしそれでも結局、彼は彼女を手に入れることはできなかった。

彼は長い年月を経て、築き上げた彼女との関係を水に流すことを決めた。

彼女は彼が関係を水に流したことなど、今現在でも知りもしない。


彼女は彼のことを「優しい人」だと思っていた。

しかし、それだけだった。

彼は彼女の欲しい物をくれる人間だった。

欲しいと云うのではなく、ただ願うだけで彼は何でも持って来てくれた。

彼女から彼に何かを欲しいなんて云うことはなかった。

ただ、彼が持ってきただけ。

彼女は彼が何で物を持って来てくれるのかなど、考えたことはなかった。

彼女にとって彼自身が物でしかなかった。

物を持って来てくれる物。

それが彼だった。

しかし、最近彼は彼女に連絡をとらなくなった。

どうやら彼は自分の立ち位置に気が付いたらしい。

だが、彼女はそれすら考えてはいない。

彼に会いたいと思ったことなど、一度もないのだから。


彼と彼女の関係など、物をあげるかどうか、ただそれだけなのだから。



すごく「優しい人」だね、この彼という人物は。

彼女が欲しいと思う物を、彼女が欲しいと云う前にあげるのだから。

それだけ彼女のことが好きだったんだね。

でも、それだけだったんだね。

彼の想いが伝わることなど、一度もなかったんだ。

それでも彼女に怒りをぶつけることさえしない彼はなんて優しいのだろう。

でも、その想いや怒りにも気付かない彼女は、このお話の中で1番「優しい人」だ。

もし、彼女がその想いに気が付いていたら、彼女は彼を拒絶していただろうから。




少年は本を閉じ、本棚に戻した。

そして、少年は次の本を手にするため、歩き始めた。

ただ次のお話を見つけるために。






ボツになりそうなお話を束ねて、形にできたらいいなと思ったから、回廊を作った。

少年は補足説明的な役割。



欲しい物は自分で欲しいって云わないと手に入れることはできないんだ。

くれることを期待していたら、くれる人に負担がかかり続けていつか嫌になる。

そして、くれる人はただの「都合のいい人」ではないのかと思い続けて、堕落していく。

だから、オレはいつだって欲しい物は手に入れてきた。

なんだって。


優しい人と都合のいい人は紙一重なんだな。

だからもう何も云わないようにしよう。

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